平成28年度 全国高等学校総合体育大会 (中国総体) 大会総評

報告者:県ユースダイレクター 浦和東高校 荻野清明
   :県2種技術委員長 越谷総合技術高校 大森健司
   :県2種技術委員 朝霞西高校 山下暁之


 平成28年7月26日~8月2日に広島県で開催された全国総体に、本県から昌平高校と聖望学園高校が出場した。両チームとも自分たちのスタイルを貫き、全国の場で確かな手ごたえを感じただろう。特に、昌平高校は、全国総体2連覇中で今回も優勝候補の東福岡高校を激闘の末3-2で破り、その後も、前橋商業高校、静岡学園高校を破り準決勝へと駒を進めた。準決勝の市立船橋高校戦は、五分の戦いを展開したが0-1で惜敗した。聖望学園高校も相手ボールにプレッシャーを掛け続け、コンパクトフィールドを形成しての攻守一体のサッカーを披露し、1回戦、徳島市立高校に4-1で勝利。2回戦の鹿島学園高校戦も終了間際まで2-1でリードしていたが、最後に失点しPK方式で敗退してしまった。しかし、1回戦同様、自分たちのスタイルを徹底し、戦術的に徹底度の高い試合を見せてくれた。
 埼玉県は、進学先の分散傾向により、県内に絶対的なチームが存在する時代ではなくなった。しかし、各チームの指導者が、普段のトレーニングの質の向上や育成強化の徹底を更に高めると同時に、状況に応じた賢い戦いを学び取っていけば、全国で戦える強いチームは作ることができると、今大会を通じて感じた。


昌平高校の戦い

1回戦 中津東高校
 中津東は、県予選とは異なりかなり守備的な布陣・戦術を敷いてきた。昌平の本間、松本、佐藤にほぼマンツーマンで更にスイーパーを置いた。そして、中盤に人数を掛けミドルサードに自由に侵入させない守備からボールを奪ってはカウンターというプラン。ボールに対しての集結も速く1対1も粘り強い。昌平は、序盤、パスのブレやボールの移動が遅く相手を動かすことができなかったが、マンツーマン対応されなかった山下が、右サイドで効果的な突破を図ったことにより相手守備にズレが生じスペースができた。攻勢に試合を進める中、32分、山下のドリブル突破からのボールを本間が決めて先制。34分にも本間が加点し、2-0で前半を折り返した。後半も、空いたサイドのスペースを攻略し3点を奪い5-0で快勝した。攻撃が印象に残る試合であったが、中盤での厳しい守備が攻守一体の素晴らしい試合となる要因となったことは見逃せない。様々な面で相手を上回った感はあるが、DFがオフザボールで横から流れてくる相手FWを掴み切れていなかったことがあり、守備の準備にやや課題が見られた。

2回戦 東福岡高校
 東福岡は、大きく速いサイドチェンジを繰り返し、高い位置を取るサイドDFとMFがサイドを力強い1対1で突破し好機を作る。その展開力に昌平は選手間の距離が離れてしまい、コレクティブな守備ができない。守勢一方の展開の中、7分に右サイドを崩され失点。その後も同じような展開が続くが、15分過ぎから前線でのプレッシャーを強め的確なスライドができるようになると、バランスの良い3ラインが保たれ意図的にボールを奪えるようになり、昌平らしいパスワークも見られるようになった。41分、右サイドでサイドDFの篠山、MF山下を経由したクロスから本間が得点し同点。その後、東福岡のほぼオールコートでのプレスとマンツーマン気味の守備に対して、小気味よいパスワークでアプローチの的を絞らせない状況を作り出せるようになると、ボール保持率は五分以上になった。後半の飲水タイム以後、更にサイドからの攻撃を徹底すると、相手守備の中央に隙ができ始めた。59分、ファーストディフェンダーの寄せが甘くなったバイタルエリアへ侵入し、最後はペナルティエリア内へのワンタッチの縦パスで抜け出た本間がファールを受けてPKを得た。これを松本が冷静に決めて逆転。昌平のサッカースタイルを象徴するシーンであった。試合の主導権を昌平が握ったまま進み、試合終了を迎えるかと思われたが、昌平は、終了間際に自陣深い位置でフリーキックを与えてしまい豪快なヘディングシュートを決められ同点とされた。PK戦はできる限り避けたい東福岡は、残されたわずかな時間も猛攻を仕掛けてきたが、昌平の選手は気丈に自分たちのリズムを保ち戦った。アディショナルタイムも終わろうかという時間、左サイドを攻め込み得たコーナーキックを針谷が右足でGKの頭上を越えて落ちるキックを直接決め劇的な勝利を収めた。針谷は1回戦の中津東戦でもコーナーキックから得点しており、彼の技術の高さを見せつけられた。体格、フィジカルの強さ、大きな展開力を作り出すキックの技術などに勝る東福岡の攻守に耐える展開から自分たちのスタイルへの活路を見出し勝ち取ったこの試合は、間違いなく昌平の今後の成長材料となったであろう。

3回戦 前橋商業高校
 守備的なゲームプランの前商に対して、なかなか相手守備陣形に入り込めない展開であった。立ち上がりから前商のブロックの外でゆっくりポゼッションし、時折ロングフォワードパスで裏を取ろうとするが、スペースが少なく突き切れない。強固なブロックに真っ向から入り込もうとすると、前商の厳しいプレスに捕まりボールを奪われカウンターを受けてしまう。前商のプラン通りの試合展開の中、29分集中を欠いた守備ラインをワンタッチのパスで破られ失点をしてしまった。その後もやり方を変えることなく前半が終了。後半、メンバーとポジションを変更し活路を見出そうとする。これにより、前半よりも流動性が見られるものの最後のところで堅い守備に阻まれることの繰り返し。しかし、前半とは明らかに異なる昌平の揺さ振りに消耗させられた前商守備陣に疲労が見られ、終盤に昌平らしいテンポの良いショートパスからの崩しが出るようになった。万事休すかと思われたアディッショナルタイム、バイタルエリアで横パスを受けた山下がワンタッチの鋭い縦パスを本間に入れ、振り向きざまのシュートで同点。PK戦も落ち着いて決め勝利。後半の采配変更が勝利に結びついたゲームであった。

準々決勝 静岡学園高校
 互いにポゼッションする同タイプのチームかと思われたが、ボール局面での力強さの静学、しなやかさの昌平と明らかな違いがあった。試合が進むにつれ、昌平ペースの展開となる。ポゼッションからタイミング良く裏に抜け出すロングフォワードパスや低く鋭いグランダーの縦パスで攻撃のスイッチが入ると一気にゴールへ迫っていく。前半終了間際、その攻撃に対応しきれなかった相手選手が一発退場を受けた。後半、一人多くなった昌平は、ドリブルを活かし多彩な攻撃を仕掛けた。50分、自陣からのビルドアップから針谷を経由して左サイドへ展開し、松本、本間のパス交換から最後は松本の技ありのシュートで先制。その後、静学は2バックに変更し攻撃に人数を掛け、高さとパワーとセットプレーで勝機を見出そうとするが、昌平は体を張ってしっかり守り、カウンターで追加点を狙うという展開になった。試合はそのまま終了し1-0で勝利した。この試合、針谷のプレーが相手を翻弄した。昌平全員の勝利には違いないが、その中で針谷の存在はとても大きなものであった。

準決勝 市立船橋高校
 厳しく連続アプローチし圧力のある守備の市船に対し、パスとドリブルで絶妙にかわしながらポゼッションする昌平。市船は、奪ったボールを素早く前線に送り速攻を試みるが、昌平の攻守の切り替えも素早く、シュート場面までは持って行かせない。市船のプレスをかわすべく繰り出す針谷のサイドチェンジは極めて有効だが、その後にスピード感がなく昌平も好機を作れない。サイドバックが極めて高い位置を取り、サイドハーフが中のスペースに入りビルドアップに参加する市船の動きに対し、うまくマークの受け渡しができず良いポジションが取れなくなった昌平は、徐々にサイドを攻略され好機を作り出されてしまう。それにより、サイドバックが攻撃参加できなくなり、攻守のバランスが崩れ持ち前の攻撃的な姿勢が影を潜めていった。30分、自陣で奪われたボールをショートカウンター気味にサイドを突かれ失点してしまったが、全体的には、昌平の落ち着いたポゼッションが市船にいらだちを募らせるような前半であった。後半、市船は、更に守備の圧力を強めるとともに奪ったボールをチームとしてポゼッションし、昌平にボールを保持させない戦い方に修正してきた。昌平は、ボール保持率が減少し守勢に回る場面が増えたが、それでも時折見せるカウンターで勝機を見出そうとする。しかし、市船の厳しさは体力的・メンタル的・戦術的にも落ちることなく、したたかに勝利へと向かう戦い方で勝利した。
 昌平は、自分たち力を出し切った。この試合から得た課題は今後の大きな糧となるであろう。
 また、互いにこの試合が6日間で5試合目。ナンセンスな日程であるが、それに言い訳しないプレーを披露してくれた両チームを称賛したい。

聖望学園高校の戦い

1回戦 徳島市立高校
 初出場の聖望学園高校は、1回戦で徳島県代表の徳島市立高校と対戦した。フォーメーションは埼玉県大会と同じく4-1-4-1でスタート。立ち上がりは徳島市立に主導権を握られるが、県予選と同様にラインを非常に高く保ちコンパクトフィールドを形成しながらプレスをかけ徐々にいい状態でボールを奪える回数が増えてくる。このような展開から前半23分に先制点を奪う。その後は徳島市立が前がかりになったところを、いい形でボールを奪いショートカウンターを仕掛けていく場面が多くなる。このような展開から決定機を逃さず確実に得点を挙げ、4-1で快勝した。

2回戦 鹿島学園高校
 この試合も1回戦と同様のシステムで臨んだ。攻守ともに自分たちの特徴を出し、先制されるも逆転をして3回戦進出かと思われたが、後半アディッショナルタイムに同点に追いつかれPK戦の末敗れた。全国大会という舞台でも攻守においてチームの特徴を出し、通用している部分がたくさんあった。聖望学園高校にとっては大きな自信になった大会だっただろう。ただし、勝ちきれる試合に後半のアディッショナルタイムで追いつかれて敗退してしまったことは非常に悔やまれる。この経験を活かし、今後、さらに成長していってもらいたい。


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