平成28年度 第95回 全国高校サッカー選手権大会埼玉県大会 総評

 

報告者:高体連技術部員 東京成徳大学深谷高校 為谷洋介 

「正智深谷 2年連続3度目の栄冠!!」

 8月21日から11月20日にかけて、平成28年度第95回全国高校サッカー選手権大会埼玉県予選が開催された。決勝トーナメントは、埼玉県リーグ参加校26チーム、総体埼玉県予選ベスト8のチーム、1次予選を通過したチームを合わせて52校によるトーナメント方式でおこなわれ、優勝は正智深谷、準優勝は浦和南、3位に昌平と西武台という成績に終わった。この結果、正智深谷が2年連続3度目の栄冠に輝き全国大会への切符を手にした。
 優勝した正智深谷は、5試合で1失点と堅守が際立ち、相手の強みをうち消しながらも選手交代やポジションチェンジで相手の弱点を突くことができ、安定した守備をベースに主導権を握り勝ち上がったチームであった。全国的に、ここ数年の傾向から攻撃と守備の役割を分業し、リスクを冒さないサッカーを展開するチームが勝ち上がっている中、正智深谷は攻撃の優先順位を意識し、全体をコンパクトにすることで攻守の一体化を図り、相手に隙を与えない守備と一瞬の隙を突く攻撃ができるチームであった。
 一方、準優勝の浦和南は、空中戦の強さと粘り強い守備をベースに、多彩なセットプレーを駆使しチーム戦術を徹底したチームであった。高さを生かした攻撃は迫力があり見る者を驚かせた。決勝戦では、1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイムに浦和南がロングスローから同点に追いついたシーンは周囲に感動を与えたが、PK戦の末、正智深谷の勝負強さに惜しくも敗れ幕を閉じた。
 3位の昌平は、Jリーグ内定の針谷、松本を中心とした高い個人技を生かし、攻撃の優先順位を意識しながらボールを動かしゴールを狙うサッカーを展開した。チームでボールを保持する時間を増やし主導権を握ることで昌平スタイルを押し通した。準決勝では正智深谷の堅固な守備ブロックを最後まで崩せず涙を呑んだが、スタイルを崩さなかったところに矜恃(きょうじ)を感じた。同じく3位の西武台は、ボランチで主将の今井を中心に高い技術とスピード生かした攻撃を展開し、長短織り交ぜたパスで相手ゴールに迫るサッカーで勝ち上がってきた。準決勝の浦和南戦では、相手の粘り強い守備に特徴であるスピードが阻まれた。守備面において浦和南の縦に速い攻撃の対策が曖昧になり後手に回ったことが悔やまれる。
 大会全般をテクニカルな“攻守一体”の視点で見ると、ボールを中心としたポジション取りで、相手の状況を見ながら味方との距離感が良く、攻守の切り替えが速いチームが勝ち上がっていたように思う。攻撃面においては、判断無しで前線にボールを放り込む場面は少なくなり、攻撃の優先順位を意識して、人とボールに関わりながら攻撃を組み立てようとする姿勢が見られた。しかしながら、味方との距離が遠かったり、あるいは近すぎて、ビルドアップの途中で相手にボールを奪われてピンチを招くシーンがあった。
また、攻撃が早くなりすぎたり、リズムが一本調子で相手に読まれて、ボールを失うシーンや、前線にボールが渡っても孤立してしまい相手選手に囲まれてボールを奪われるシーンもあった。
 守備面においては、選手間の距離が遠くファーストディフェンダーの決定が遅くなり、チャレンジ&カバーが不徹底になり、簡単にギャップを通されてピンチになるシーンが目立った。また、自陣ゴール前においてボールウォッチャーになってしまうシーンが見られ、ラストパスの精度が高いチームや即興性のあるプレーには対応できず、簡単にゴールを奪われてしまうことが多かった。守備における正しいポジショニングはもちろんのこと、チームとしていつ、どこで、どのようにボールを奪うかを明確にしたい。また、チーム全体に間延びが生じ、攻守の切り替えが遅く、ファーストディフェンダーが曖昧になり大きなピンチを招くシーンや、ボールを奪ってもサポートの距離が遠くせっかくのチャンスをシュートまで生かせないシーンも見られた。
 全体を通して「個」のレベルアップは欠かせない。特にボールが無い時の準備、試合の流れを判断する力のレベルアップが必要であり、“見ること“を普段から習慣化する事が重要である。ゲームを観る力、プレーの中で判断する力には洞察力が含まれてくるので、トレーニングの中からゲームの全体像をイメージし、色々な状況に応じて判断する力を養いたい。 
 結びに、本戦に出場する正智深谷は、試合の中で起こりうる様々な状況を考えながら、良い準備をして全国大会に臨んでほしい。


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